『種憑け村 〜白濁神、念仏講ノ儀〜』
「産まるるは、おのこばかり……
心の穢れた者どもを、神に――」
――多田根村。
東北奥地にあると言われる人里離れた寒村。
其処の村人はマタギを祖に持ち、現在も狩猟と林業で生活を営んでいる。
古来より外界との接触をしてこなかった所為で、この世から忘れられた不気味な村。
その影響で新しい血の交雑が行われず、村民の遺伝子に障害が起き、
この村は慢性的に男性が多くなってしまっている。
しかし、村がその対策を講じていないわけではなかった。
村独自の奇妙な風習で女性の出生率を高めようとしているのだ。
「日に一度、女は男の子種を飲み、男は女の小便を飲む」
そうすることによって女は女の子を孕みやすくなり、男は女の子を孕ませやすい
子種になると考えられている。
しかし不定期だが、村が女性に限り外の人間を積極的に受け入れる時がある。
村の男女人口比率が一定数を超えると、月齢に合わせて儀式が執り行われる――
『多根憑祭事(たねつけさいじ)』
祭事の内容は高名な民俗学者でさえ、はっきりと判らない。
この物語は、都市伝説でしか耳にしないような奇妙な村。
其処で執り行われる陰惨な儀式に参加させられた都会人女性たちが
満ちゆく月とともに心を砕かれ、そして神に堕ちるまでを描いたものである。
「満ちゆく月、砕ける心。
その夜、私は神になった――」
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