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主人公・辰巳 亮(たつみ りょう)は、人には言えない悩みを
抱えていた。
女手一つで自分を育て、大学まで進学させてくれた母親を、
ひとりの女性として見てしまうようになっていたのだ。 |
母さん――辰巳 円(たつみ まどか)
母一人、子一人の辰巳家。
亮にはそれ以外の家族はない。
十年前に事故で他界した彼の両親に代わって、
実母の従姉妹だった彼女が、亮を引き取った。
彼は温かく抱擁してくれた円の手を、今でも憶えている。 |
亮を引き取ってからのこの十年、円は自らの事は捨て、
なによりも亮のことを優先して生きてきた。
女手一つで『息子』を育ててきた。
しかし三十二歳という年齢は、女を捨てるには早すぎた。 |
夜な夜な、息子の下着で自慰行為に耽る円。
そう円もまた、逞しく育った亮を息子としてだけでなく
ひとりの男性として見るようになってしまっていた。
ある晩、母親の見てはいけない姿を目撃してしまった亮は、
悶々とした夜を過ごす。
だが、ふたりが気まずい朝食を共にすることはなかった。
翌朝。ふたりの慎ましやかな日常が突然終わりを告げたのだ。
円が細々と続けていた学習塾は抵当に取られ、
それと同時に彼女は手紙を残し、行方が判らなくなった。
呆然とする主人公の前に現れたのは、身奇麗な、
それでいて硬い容姿のメイド、大木フミだった。
彼女は冷徹に告げる。 |
フミにわけも分からぬままに連れて行かれた先は、山奥の瀟洒な洋館。
大正の香りを残すその館で、肌も露わな女優のようなドレスを
着た女主人、四ツ谷晶江。
気だるげな笑みと、零れ出た白い肢体に釘付けとなる亮。 |
人跡途絶えた栄華の跡地――
母親の借金のカタに四ツ谷屋敷の使用人となった、亮。
その生活はすべて晶江、『奥様』に捧げられるようになる。
日常的な世話のみならず、風呂での三助から、
奥様のヴァギナの手入れまでをも任せられる。 |
「ふふ、それが恥垢よ。
あなたは触るのは初めて?」
「は、はい……奥様」 |
奥様に捧げられるものはその忠誠心ばかりではなく、
彼の若い肉体もだった。
亮が童貞であることを知った奥様は、良い暇つぶしが出来たと
ばかりに囁いた。
彼の襟をそっと掴み、その耳元に唇を近づける。 |
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